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現代の妖怪・事典から   野ア 準 : 2015/09/30(Wed) 06:25 No.577
11  図書館で調べ物のついでに小松和彦編『日本怪異妖怪大事典』(東京堂。2013)を読みました。新しい本なので戦後の「都市妖怪」「学校の怪談」インターネットで広まる「ネットロア」なども収録されていますが、刀剣関係の項目はほとんど無く、斜め読みで見つかったのは「童子斬り安綱」の所で越前宰相松平忠直の狂死の原因がこの刀の祟り、とあること、「ツルギミサキ」で地中から出土した魔刀の事がでている程度でした。

 武器・武具の伝承が一般民衆には無縁になってしまったという事でしょう。

「十勝アイヌの伝説」として魔剣「イペタム」という話がありました。「イペタムとは『食べる刀』という意味で、血に飢えて時々鞘から抜けて殺人を犯すので石とともに箱に封じておく。イペタムの騒ぐ音をまねただけで敵が逃げたほどだ。あまりの魔力に山や湖に捨てたが戻ってくる、最後は底なし沼に投じてやっと出てこなくなった」(要旨)という説明がありました。イペタムをネットで検索するとゲームのキャラクター等で結構出てくるのですが、このへんが出典なのかなと思います。

Re: 現代の妖怪・事典から   野ア 準 : 2015/10/06(Tue) 06:49 No.578
11  元の話を知りたくて大著『日本昔話通観』1(同朋社・1989)の北海道アイヌ伝承の巻から「人食い刀イペタム」を探しましたが、再録の話の他に類話・参考話が20編近くついている有名な話の様でした。

「村おさの家に古くから伝わる刀で蒲のコモか箱に厳重に収める。血を求めて柄が音を立てるので、その音をまねただけで盗賊団や敵兵が逃げ出す。取扱いを誤っての殺人が多いので山・大河・海に投じても戻ってくる。そこで神託により底なし沼に投げ込んだ所、刀の形の巨岩が沼の底から現れた、その底なし沼は後に消えてしまったが刀の形の巨岩は今でもある」というのが全体の話の様です。
作刀の由来がありません。アイヌ民族の刀は日本から輸入した数打ち物の刀やヤキの入らない軟鉄の模造刀が多いそうで、どこからか伝来したのでしょう。

 アイヌ民族の名剣にはユーカラ『虎杖丸の曲』で英雄ポイヤウンペの愛刀とされる「クトネシリカ」などもありますが、この大著では「忠義な宝刀」の項目で触れているだけで、巻末の索引には「イペタム(エペタム)」どころか「刀」の項目もありません。もう武器・武具の伝承が重く見られていないのでしょう。

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