2012年1月31日 第11回出題「坂倉言之進照包」


 今回の答えは、「坂倉言之進照包」でした。
 入札は大坂新刀諸工へ集中し、結果的としては良い入札結果といえるでしょう。

 言之進照包は、手掻派の末裔と称する陸奥守包保の弟子で、初代越後守包貞の養子とされています。
 養父同様に越後守を受領し、越後守包貞と切銘していましたが、初代の実子岩松が鍛冶として一人前になると、二代目包貞銘を譲り、本姓である坂倉を名乗り、切銘を、「坂倉言之進照包」と改めました。

 包貞銘時代は、湾れに丁子刃や五ノ目に丁子交じりの刃文を焼いていましたが、改銘後は助広に似た大らかなトウラン刃を焼くようになりました。
 刀姿は、寛文新刀の体配ものを経眼した記憶があります。
 トウラン刃の場合、助広同様に刃中に玉を焼くものがありますが、助広は刃文から離れて焼くのを手癖としているのに対して、照包の場合は刃文に接して焼いています。

 更に照包の刃文の特徴として、箱かかる五ノ目と矢筈かかる五ノ目があることが特筆されます。
 この矢筈がかったものを鑑定家の間では、「鰹の尻尾」と形容しています。

 また、照包の刃文は、助広の刃文に比べて激しさがあり、打ち寄せる波を表現したのか、刃文が斜めに傾いたものをみます。
 これを鑑定用語では、「片山乱れ」といい、五ノ目足が二つ揃って入るのが他工との違いでもあります。
  
 そして、何よりもの特徴は、刀身の横手下に五ノ目を三つ揃えて焼く手癖があることを、ご承知置き頂きたいと思います。
 前述の片山乱れと、横手下の五ノ目三つは、照包鑑定の要訣であるといえます。
 
 彼の特徴は、刃文だけではなく、造り込みにもあり、平肉がたっぷりとして、庵の棟が急峻(高い)であることが知られています。
 俗に、【棟でも切れそう】と表現されています。
 帽子は押形のようなものが多く、茎は大筋違いの鑢目で、目釘下棟寄りに銘を切ります。
 裏銘が表銘に比べて鏨が細いものを使用しているようであります。
 
 それでは今回はこの辺で失礼させて頂きます。

                           竹  屋  主  人

私の見方

A氏:「小板目肌つみ、地沸細かによくつむが少し硬い」の「つむ」と「硬い」の語や切っ先の伸び気味の感じから新々刀?と思ったのですが、涛乱刃=大阪新刀の図式で新刀に持ってきました。

Y氏:涛乱刃だが焼き出しがあり、沸匂の付き方が助廣とは違うようで、姿から新刀と観て、銘「坂倉言之進照包」とします。

H氏:元先にやや差があり、反りの少ない寛文新刀体配に詰んだ地鉄に焼き出しとくれば大坂新刀。涛乱刃といえば助広ですが、助広ほど整然としておらず、よく言えば変化に富んでいるのは照包。助広に比べ地鉄に硬さがみられるのも特徴。

M氏:反りあさく、元先の幅やや開き、化粧鑢などから寛文新刀。濤乱刃、卸が急、小板目良く詰んで、地沸良くつく地鉄、足の太く、長い焼出しの刃文、入山形の茎などから判断しました。


※ 今回はお二人の方が初参加して頂きました。今後もご愛顧を宜しくお願いします。