2012年6月1日 第3回出題「備州長船盛光」


 今回の答えは、「備州長船盛光」の小脇差でした。

 入札は、ほとんどの方が一の札で、「盛光・康光」への入札となり、結構な結果となりました。
 盛光は、同時代の康光と並んで応永備前の双璧とされ、この二人に、「師光」あるいは、「祐光」のどちらかを加えて、「応永の三光」又は、「応永の三作」などと呼ばれ、愛好家の間では珍重されています。

 盛光の出自については、師光の子とされているようですが、その他に諸説あるようですが割愛させて頂きます。

 今回の鑑定に重要なポイントは、なんと言っても、「身幅の割りには重ねがある。」という一言です。
 これは、室町時代初期の刀や脇差・短刀で、鎬造りや平造りの如何に係らず共通する特徴であることを押えて頂ければと思います。
 後は、「先反りごころがある。」や、「寸が伸びる。」などの特徴を裏付ける文言も読み落としてはいけません。
 こういう細かいことが、誌上鑑定では重要で即実刀鑑定に結びつくものと思料しております。

 そうしますと今回の入札は、「板目に杢まじり」や、「棒風な映り」などの地鉄の特徴から備前ものとし、姿から室町時代初期と捉えて、「盛光」又は、「康光」に入札するのが順当な鑑定結果と言えるのではないでしょうか。

「師光」への入札者はおりませんでしたが、「師光」の場合は、二工ほどの洗練さを窺うのは少し無理があるようで、どちらかと言えば、「小反物」に作風が近似しております。
 また、「祐光」への入札がありませんでしたが、優劣を競うような鑑定会でなければ、「当たり」として扱ってもよいと考えます。

 以前に静岡県の佐野美術館での鑑定会にお邪魔させて頂いたおりに、「備州長船尚光」という応永年紀の太刀が鑑定刀として出題され、迷うことなく、「盛光」に入札したことを思い出しました。
 この太刀の鑑定記録をみると、今回出題の小脇差の特徴と共通するところがあり、「腰の開いた五の目丁子」に、「帽子がちょこんと尖った」ところなどが記録所見に見え、まさに応永備前の典型と感じた次第です。

 さて、「康光」との違いですが、第2クール第3回解説に詳細を記述しておりますのでそちらをご参照下さい。

 それでは、今回はこの辺で失礼させて頂きます。

                                 竹   屋   主   人

 法城寺氏
 身幅の割に重ねが厚いとなると、応永・室町前期。杢目交じりに映りとなると、備前伝を考慮。とがった蝋燭帽 子、丸止めの刀樋となると、盛光・康光。起伏および大き目な互の目丁子は盛光、こずんだ丁子が康光との差 異でいくと盛光。

 よっちゃん氏
 鑑定刀は先反り、寸延びて重ね厚く、匂出来、棒風映り、互の目丁子から、銘 備州長船盛光