2012年7月1日 第4回出題「与三左衛門尉祐定」


 今回の答えは末古刀を代表する名工、備前長船の与三左衛門尉祐定でした。
 
 入札では圧倒的に祐定への入札が多く、まことに喜ばしい結果となりました。
 与三左衛門尉祐定については、第2クール第6回に詳しく解説しており、また、法城寺さんから、素晴らしい入札所見を送って頂いたので、今回は少し変わった角度での解説をしてみたいと思います。

 祐定は、銘鑑によれば南北朝期からその名前を見ますが、実際、その作品は確認されていないのが現状であります。
 祐定は、ご存知のように同銘が二代あって、初代が、永正から天文の間の年紀のものがあり、二代は、永禄から天正にかけての年紀のものを見ますが、鑑別するには刀姿を見れば時代の相違が出ており、初代に比較して見劣りする所があり、初代の作品と紛れることはないので、比較的容易に鑑定出来ます。

 世上、愛刀家の垂涎となっているのが、初代の与三左衛門尉であり、購入するとなれば、大枚を用意しないと、手元に引き寄せることは先ず無理でしょう。
 初代は、永正八年以前の作品に俗銘を切ったものがない、と言われています。
 そこで、数寄者の間で密かに珍重されているのが、俗銘のない永正年紀を有する祐定です。「永正祐定」と呼ばれ、銘振りや茎の出来の良いものは、明らかに数打ち物の祐定とは違い、与三左衛門尉祐定と同人説や、別の名人などと憶測されています。

 特に、「備前国住長船祐定」銘のあとに、「作」や「作之」、年紀は、「永正○○年二月日」ではなく、「永正○○年二月吉日」など、「吉」の字が加えられたものなどが要チェックポイントです。
 ただし、共通して言える事は、銘が楷書できっちりと切銘されているのが前提となりますので、斜行した字体のものは避けるべきでしょう。
 更に付け加えれば、茎の色合いです。
 高価なチョコレートの様に光沢のある茶色であることが、必須条件であります。

 以上、少し変わった解説をしましたが、如何だったでしょうか。
 それでは今回はこの辺で失礼させて頂きます。

                            竹   屋   主   人


 よっちゃんさん
 鑑定刀は小ぶりで映り、俗名があり刃の帰りが長いところから末備前と観て、焼き出しから先までの刃幅が広 いので祐定系として銘 備前國住長船与三左衛門尉祐定 とします。

 まるひさん
 短寸、無反、ふくらが枯れ、厚い作りで、映りがあるところから、末備前とみました。忠光、勝光、宗光、祐定、  赤松政則。個銘の決め手がないのですが、所持銘と字数から与三左衛門尉祐定としました。

 法城寺さん
 小板目に小杢よくねれ地沸つき地景入りとなるとかなりの名工。映りがあるという点から備前を考える。小振り な体配で重ねがやや厚いとなると鎧通しを考慮。
 五寸から六寸中ほどの長さは室町中期、後期末期の末備前だと七寸五分以上に延びてくることを鑑みると、則 光、祐光などが候補に挙がるが、俗名入り・十四文字とあるので末備前勝光、宗光、祐定、清光まで範囲を広 げて考える必要がある。長さ的には宗光によく見る体配であり、深く棟を焼くのも合致する。しかし、注文銘(所 持者銘)は祐定・清光に多い。
 刃長を考えると後代の祐定・清光というよりも永享備前のすぐあと、勝光・宗光とも時期的に被るところのある  初代の与三左衛門祐定が一番いいように思える。六寸〜七寸弱の現存品も初代には見かける。

 ※ 皆さん、ハイレベルな入札所見に脱帽です。(竹屋主人)