2012年10月1日 第7回出題「畠田守家」


 今回の答えは「畠田守家」の太刀でした。

 ほとんどの方が一の札で「当」を取っておられ、入札者各位の鑑識眼の高さが窺える結果となりました。

 「守家」は長船鍛冶の祖と言われる、「光忠」とほぼ同時期の刀工と言われています。
 畠田という地名は、長船に隣接した地区名で、現在でもその地名が残っていると言われています。
 畠田一派の初祖は、「福岡一文字の守近」で、時代を建久頃としています。
 また、「守家」には二代あるとも言われています。

 「初代守家」は長船の祖、「光忠」と交流があり、両者の作風には、似ているところが処々に見られますが、守家には光忠のような、「猪首切っ先のものがない。」というのが通説になっているようです。
 地鉄は小板目がやや肌立ち、刃文は匂いの深い丁子刃が、華やかに目立つものが多いとされています。
 その丁子刃には逆がかったものや、蛙子が混じるものを手癖としているようです。
 また、銘の下部に花押を切ったものを散見するのも、守家の特徴として挙げられています。
 有名な「光山押形」に、「守近孫守家」という短刀が所載されていますが、二代守家が祖父の業績を引継いだことを誇張するためのものでしょうか。興味をそそる一口です。

 守近の初二代の判別は難しいものの、姿形や地鉄の説明から、鎌倉中期の備前物と捉えてい頂ければ個銘に執着しなくても良いのではないでしょうか。
 畠田一門は、銘鑑に多くの刀工名を残していますがその作品は少なく、その中でも「真守」、「光守」、「家助」、「守重」などが知られているに過ぎません。


 今回も、入札者の素晴らしい鑑定所見が寄せられています。
 なかなか労作ばかりなので、一読をお願いします。

 それでは、この辺で失礼させて頂きます。

                     竹  屋  主  人


 私の見方


 まるひ氏
 体配はから鎌倉期の太刀。鮮明な乱れ映と丁子から備前。重花、蛙子丁子などから福岡一文字、長船光忠、 長光、畠田守家。銘が3文字であるので、光忠、長光ははずし、福岡一文字か守家。
 決定的にどちらともいえないのですが、福岡一文字にしては刃文が寂しい気がしますので、守家としました。

 よっちゃん氏
 鑑定刀は、設問から鎌倉期の備前刀で蛙子、重花丁子などから吉房、光忠、守家が浮かび、吉房は三字銘は 無く、光忠は守家より身幅が広いものが多く、守家は細身の物が多い、また、三者のうち守家が地金が弱いの で銘 守家造 とします。

 法城寺氏
 鎌倉中期前後の体配に乱れ映りとなると、まず備前を考える。
 小沸づき、袋・蛙子・重花丁子というと福岡一文字。吉岡一文字あたりも候補になってくるが、出題刀はそれら の焼幅の広い刃文とは異なっている。
 そうなると同時代で蛙子丁子を焼く長船光忠、畠田守家に絞られる。
 物打ちあたりが小模様で穏やかになるところなども両工の特徴。
 どちらを選択するか非常にむずかしいところですが、押形の匂い口にうるんだような箇所を見出すのと、光忠  が名鑑では、「光忠造」という三字銘があるようですが、現存品は、「光忠」と二字銘が圧倒的に多く、その他は 大磨り上げ無銘の極めもの中心であることから、長銘よりも、「守家」、「守家造」の二字・三字銘が多い守家と しました。


 ※最近、入札者各位の鑑定所見に素晴らしいものが多く見られ、嬉しく思います。
   もうそろそろ、私の役目も終わりかなと感じる次第です。(笑)