@ 著者は「民衆は刀を封印することによって武力(一揆)を抑制した」つまり現行憲法と同様に戦力の放棄をした、ということを云いたいようですが、これには大いに異存があります。 第一に、室町末期の一揆を例にしますと、規模の大きいものは相当の戦力をもち、その中心的な武器は云うまでもなく「弓鉄砲」であり「槍」でした。これは当時の戦国大名の場合ともおなじです。 つまり、「刀剣」はそれのみが「戦力」にはなり得ないないわけで、この点は神武の東征以来、日本の戦いにおける武器の歴史を見ても明瞭です。これは著者が「刀=戦力」という単純な思い違いから出発した虚構ということになります。 A しかしながら、民衆の家に伝え持った刀や脇差が、先祖の門脈や武功を示すものであったり、「武の心」といいますか、「自衛のための精神的支柱」であったことは当然ながら考えられることです。 B 日本刀の登録件数250万口、ですが、幕末の人口1500万、(3人が1戸としておよそ500万戸)としますと、「よくぞ隠しもったもの」と思います。戦後のGHQによる刀狩りは、なんら徹底されてなかったということになります。 C 刀剣の即売会や展示会のサービスとして「無料鑑定・登録相談」をしますと必ず「隠し持った刀剣類」が顔を出します。私もこの鑑定を手伝ったことがありますが、実に見事な「隠し持ち」の仕方です。竹の筒に入れたもの、掛軸の箱に入れたもの、何重にも包まれていて取り出すだけでもたいへんでした。 現在でも「発見届」による新しい登録が年に○万本もあるわけですから、「民衆による刀の封印」はかなりのものですね。